監督失格
2011年/日本
監督:平野勝之
プロデュース:庵野秀明
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故人である林由美香さんの、生と死についてのドキュメンタリー。
閉じた関係のなかで、監督の平野氏が撮影した膨大な動画を通して観る林由美香さんは、とても真面目で素直で、捉えどころのない孤独な女性にみえた。
由美香は監督のことが好きな瞬間なんか無かったと思う。監督は由美香が好きなことがとてもとても伝わってきたが、彼女の言動からは一度も伝わらなかった。
この映画からはどうしても恋愛の匂いをかぎ取れなかった。会話からは嘘の匂いしかしなかった。感じたのは、林由美香さんの不安定であざやかで孤独な生と、死による喪失と解放。
<メモ>
・愚痴を言ってしまったと後悔し「メロンとどいた?」と言ってしまう優しさが哀しい。
・北海道から帰る電車のシーン。監督が謝るところ。由美香の顔(あのシーンを観て、由美香が監督を好きだと思う人はいないと思う)
猿の惑星
原題/PLANET OF THE APES
1968年/アメリカ
監督:フランクリン・J・シャフナー(脚本/マイケル・ウィルソン、ロッド・サーリング)
出演:チャールトン・ヘストンと猿たち
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ストーリーも結末も知っているが観たことがなく。
創世記とかを観たいな、と思ったのでどうせなら初めから!と思い手を伸ばしたが、50年も前の映画なのだと改めて実感。1968年って50年も前!?計算あってる!?あってる!
ベトナム戦争とそれを取り巻く人種差別問題、左翼活動、のなかでうまれたヒッピーブーム、ウーマンリブ・・・、当時この映画はセンセーショナルだったんだろうな。特に序盤、アメリカ合衆国国旗がやたら目につく。1968年といえばビートルズがインドに行ったりしていた頃。
言葉が通じるのに意思疎通が出来ないというのは本当に恐ろしい。言葉が通じないより恐ろしさは増す。戦争なんか最たるもんかもしれない。
藤子・F・不二雄先生の異色短編集のなかの「ミノタウロスの皿」を思い出した(あれらは海外のSF作品から大いにインスピレーションを受けているのだろうけれど、私にとっては漫画のほうが先だ)。ウスたちのなかでくらす人間たちは言葉が話せたけれど。あれはいい漫画なんだよな、さいご泣きながらちゃんと食べるところがね。話が逸れたことを謝る義理はないね?
正直に申し上げて、やっぱりちょっと古い映画は観るのがしばしば辛い。眠くなる。が、結末のところは、知っていたにせよやはり衝撃だった。われわれは、逃げても逃げてもお釈迦様の掌のなか。
<メモ>
・宇宙船でタバコ吸ってる!
・そういやプラネテスでも吸ってたな姉さんが!
・宇宙船のベッドんとこ、中銀カプセルタワービルみたいでかっこいい!(考え方が逆かもしれない)
・3人の制服が機能性ゼロ。水たくさん吸うし伸縮しないし
・もいじゃうのかよ!お花、もいじゃうのかよ!やっと見つけた生命の息吹、もいじゃうのかよ!そして3人でお花囲んじゃうのかわいかったよ!
・ヤッホーって泳いでて服持ち去られちゃうのアメリカ人ぽくてかわいい
2010年
原題/2010: The Year We Make Contact
監督:ピーター・ハイアムズ
2010: The Year We Make Contact - Trailer
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2001年宇宙の旅を観た人が観ていない確率はかなり高いと思う、私もそのひとりだったわけだがフト思い立って観てみた。
ディスカバリー号に入るときのドキドキわくわく感はすごかった!まるで博物館に一緒に入らせてもらえたような。HALを殺すシーンで泣いた10代の私はHALを修復するシーンで泣く30代になれた。
SALの「私は夢を見ますか?」の質問に「知的に高度だから見るよ」と返した博士は、HALにはちゃんと向き合って「わからない」と言ってあげています。噓をつきたくない愛がそこにある。そしてHALはボーマンに会える。
HAL9000が好きな人はそれだけで単純に楽しいと思う。
<メモ>
・看護婦が読んでるTIME誌の表紙、アメリカVSソ連で、それぞれの大統領がキューブリックとクラークだった!公式レベルでいじられている。
桐島、部活やめるってよ
2012年/日本
監督:吉田大八
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よくわかんなかったねー、で終わりそうな映画だけど大変素晴らしかったそして私は好きである。実際「よくわかんなかったねー」と思ったんだけど、見終わってかみ砕いているうちにこの映画の怖ろしさに支配されてきている。
原作は未読だがタイトルも素晴らしいじゃないか?「桐島、部活やめるってよ」。AさんがBさんに聞いたことをCさんに言っている、という実態のなさ。うわさでありながら「やめるらしいよ」でなく「やめるってよ」。やめることは確定している、うわさなのに。このタイトルだけで深く考えるものがあった。
ラ・ラ・ランド
2016年/アメリカ
監督:デイミアン・チャゼル
La La Land (2016 Movie) Official Trailer – 'Dreamers'
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終始、一貫して小気味良いテンポとカメラワーク、そして音楽!
長い映画だが一度も退屈を感じなかった。今年の始まり(といっても2月も終わりだが)をこんな素晴らしい映画で迎えられたことに感謝である。
んで、サントラも買ったのだが、イヤホンで聞きながら歩いていると普通に踊りだしているものだから困っている。
<メモ>
・最初のカメラワークよ!
・靴を履き替えるところ最高。
■町山先生大いに語る
カリガリ博士
1919年/ドイツ
監督:ロベルト・ウイーネ
出演:コンラート・ファイト、ヴェルナー・クラウス、リル・ダゴファー
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サイレント映画。パブリックドメインのため、youtubeで観ました。
建物、道、服装、すべてが倒錯的で歪んでいる。主人公(語り部)の精神状態を表しているというか、回想だからぐちゃぐちゃなんだろうな、ドアが歪んでるのとか遠近感崩れる感じがすごくいいです。好きです。
そしてこれを観ながら、この世界観みたことある。何だったかな…ともやもやしていた。ティム・バートンはだいたいこんな感じだからそれかしら。と諦めかけて思い出した。夢野久作の「ドグラ・マグラ」。
わたしがドグラ・マグラを読んだときあたまの中で想像していた景色はまったくこんな感じだった。白黒だったし、うすもやがかかっていた。中学生のときだ。
調べたところ夢野久作の日記で「カリガリ博士みてきた」と記述があるらしい。根暗が時空を超えてつながった!
最後が物議をかもしている映画なわけですが、ドグラ・マグラっぽいと書いただけでまぁ、ネタバレになりますね。