アートスクール・コンフィデンシャル

2006年/アメリカ (日本未公開)

監督:テリー・ツワイゴフ(原作:ダニエル・クロウズ

出演:マックス・ミンゲラソフィア・マイルズジョン・マルコヴィッチほか

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連続殺人が起こってる美大で若者たちがサクセスを目指して、悪魔に魂を売る映画。

ものすごく最悪な話。ものすごく嫌な、人間の話。その描き方が非常に巧みで、後味は悪いし最悪だけど、人間がその選択をしてしまった理由の単純さ、ひたむきさが余りにも直情的で、矛盾してるけど(べつに矛盾はしてないか)素晴らしい映画だった。

絵画や映画や彫刻などで成功を志す若者たちが、他者との比較で苦しみながら藻掻くさまは「いかにも学園青春もの~」と思った。さいしょはコメディかなーと思いながら観ていた。ダニエル・クロウズの自伝的なコメディかなーと。見事に騙された。

▼忘れたくないので感想とあらすじを書きなぐります。※観る方は読んではいけません。

 

自分の絵が評価されない事に悩む、大人しくて素朴な主人公。授業でヌードモデルをしていた女の子に恋をして、でもそのヌードモデルは他の男の子を好きになっていく。その他の男の子っていうのが主人公のクラスメイトで、めっちゃくちゃに絵が下手なんです!(美術的なこと何もわからないけど、観てる人ってそういう人ばかりなのでこういう定義で間違っていないと思います。作中に出てくる絵のなかでは記号的に「下手な絵」として描かれている)んですが!ですが!作中の美大の人たちって四六時中絵のことばかり考えて頭がおかしくなってるので、「画期的だ!斬新だ!」ってなって、その男の子はたいへん優秀な生徒として扱われるようになります。主人公は「こんな絵が評価されるのおかしいだろ!」と意見するけど、先生を含めてみんなにその意見を否定されます。間違ってるのはお前だと。

で、たぶんヌードモデルの女の子は”評価されているのもあって”その男の子を好きになります。

主人公は妬みます。で悪魔に魂を売ります。自分で描いてない絵を自分で描いたものとして学校に提出し、あまりの事に話題になってしまいます。あまりの事というのは、学校で起こっている連続殺人の犯人が描いた絵だからです。遺体の絵です。犯人しか持ち得ない遺留物(死んだ人の学生証など)も「アート」として作品に入っています。このあたり、映画の後半に入ってからなのでかなりビビります。正気だとこんなことしないですが、すべては、自分の能力じゃなくていい、好きな女の子に認められたいから。ちなみに主人公のタバコの火の不始末で殺人犯は死にます。

ここで絵が下手な男の子登場なんですが、実は彼は殺人事件の捜査のために潜入していた警察官でした、絵が下手なのも納得です。主人公は逮捕されます。絵が下手な彼は毎日学校に通っていたので、学生(とりわけ自分をライバル視していた主人公)に私情が生まれてしまっています。

護送する車のなかで、「お前、本当に俺の絵が素晴らしいと思うのか?」と主人公に尋ねる。主人公は「思う」と言う。このシーンが本当に鳥肌立ちました、狂ってると思って。入学したての頃、主人公は「変と思うものは変」と言える人でした。

逮捕されてしまいますが、真犯人ではないのは証拠やアリバイから明白なので、弁護士は「犯人じゃないのに、どうしてなんだ」と何度も呼びかける。でも、主人公は何も言わない。連続殺人犯として有名になり、彼の絵はいまや(全く評価されなかった頃のものも含めて)高値で売買され入手困難となっています。留置所でも一生懸命に女の子の絵を描いています。彼の絵そのものが好きか嫌いかなんかどうでもいいのです。学校の先生やクラスメイトたちも彼をダシにした作品を作り、テレビに出て、話題になってゆく。

いちばん救えないのが、ヌードモデルの女の子が彼を好きになること。おそらくは”評価されているのもあって”。留置所に面会に来て、ガラス越しにキスをします。いっこも救えない、どうしようもない馬鹿どもですが、本人たちはいたって幸せです。こんな人達は大嫌いです。でも、途中から光が無くなっていた主人公の瞳がふたたびキラキラ光りはじめます。

ざっくりと、偏った書き方しか出来ませんが、とにかくこの映画には心から嫌な気持ちにさせられました。傑作だと思います。

<メモ>

スティーブ・ブシェミとかイリーナ・ダグラスとかゴーストワールドのキャストが出て来てうれしかった。イリーナまた美術の先生だし

・出て来る人たちが「普通の顔」な点が良かった。「学園一の美人」も「これ美人?」て思うほど普通の顔っていうか、いや現実にいたらまぁ美人だけど…という感じ。役者が「映画ぽくない、顔が普通の人々」ばかりでリアリティがあってよかった。

・原作、読んでみたいと思います。

・ガラス越しにキスする映画、なんだっけ、鮮烈な既視感、小さい時に観たことあるのにモヤモヤ