エレファント・マン

1981年/イギリス・アメリカ合作 124min

監督:デヴィッド・リンチ

出演:ジョン・ハートアンソニー・ホプキンス、ジョン・ギールグッド、アン・バンクロフトほか

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19世紀のイギリスで「エレファント・マン」と呼ばれた人物の半生を描いた、ヒューマン映画を装った最悪な風刺映画。鋭利なブーメランで観た人の心に傷がつく。デヴィッド・リンチ監督のドヤ顔が浮かぶ

※ポスターの画像を貼って内容を思い出すのが嫌なので、みんなだいすき象人間・ガネーシャのイラストでお送りします。

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『感動しなよね!』という匂いが漂う映画を好んで観ることが少ないです。偏見丸出しだと分かってるんですが「なんとかマン」て映画って大体そうじゃないですか(ヒーロー物除く)、なのでこの映画のことも全然気にせず生きてきたんですが、監督がデヴィッド・リンチとつい最近知り(なんとかマンだなぁ)と温度低めながらも鑑賞。白黒映画な事に驚いた。

 ものすごく嫌な気分になった。遊園地にいる両手に風船を持った超ふわふわモコモコのうさぎの着ぐるみの中身が汗まみれの全裸の痴漢だった、みたいなギャップっていうか、もう終始、これは意図的な方法で、ずっと嫌で気持ち悪くて最悪な気分にさせられた。ちなみに、私のなかで最悪な気分になる映画=嫌いな映画ではないのです。この映画は素晴らしい映画だと心から思います。

 逃げても逃げても世の中は見世物小屋で、彼に友だちなんか一人も居なかった。彼のことを両手を広げて迎えてくれる人が一番嫌らしかった。本当に観るのが辛かった。特にあの劇場に行くシーン、痴漢感が一番酷いシーンだった。もう登場人物ほぼ変態丸出し。最低だった。初めから終わりまで誰にも感情移入できなくて、完全な第三者として傍観するしかなくて、それは狙ってそうさせられているのも辛かった。看護婦長がいちばん「まとも」な人間だ、と寄りかかりたくなるんだけどそんなに登場しない。

 母親に会えるかも知れない。着地点が欲しい、という期待を最後まで捨てられずに鑑賞したものの、ついぞ会うことは叶わず。星のなかに、待ちわびた母親の幻影が見えるものの「すべては永遠に続く」と言われる始末。

 嫌な気持ちになるのは自分のなかに理解できる部分があるからで、自分が物凄く低俗で悪趣味な生き物であることを知らしめてくれる作品。「マルホランド・ドライブ」を2回めに観た時に老夫婦が車の中で爆笑しているシーンで感じたかなしみ、恥ずかしさのような気持ち、あれがずっと続いた。観てよかったとも思わないし、きっともう二度と観ないけれど、観てこういう気持ちになったことは一生忘れないです。自分の顔を鏡で見て絶叫した主人公のように、自分のなかにある嫌なものを散々見せられた。アンソニー・ホプキンスや看護婦たち、慰問するセレブたち、彼らはみんなその「自分のなかの感情」に気づいた瞬間、笑顔から温度が消えていたのだろう。その気持ちがそのまま自分に丸ごと帰ってきてダメージを受ける、傑作でした。移入できないのは自分が登場人物になってしまうからだろう。長年評価されている理由は果たしてそこなんだろうか。

<メモ>

マルホランド・ドライブを鑑賞したあとのショックが凄かったので、結構いろんな動画を観たり記事を読んだりしたのですが、”彼の作品のなかで煙がでてくるシーンはだいたい○○”みたいな記述(本人が語ったわけじゃなかったと思いますが)を読んだことがあって、2回くらいそういう場面があったので気になりました。それも深読みしてしまうし、ヒューマンの裏のその裏の裏…と掘り下げれば掘り下げるほど、あぁこれが監督の喜ぶ鑑賞態度なんだろうな。

・ごおごお鳴る風の音や機械音、工場が出て来る描写などは「イレイザーヘッド」から受け継がれている。

▼お祭りのシーンでカリガリ博士の眠り男を思い出した。

デヴィッド・リンチ作品。私がいまのところ観た彼の映画は、観終わったあと「イレイザーヘッド」で女の子が歌ううた(In heaven,everything is fine...てやつ)が脳内で延々リピートします

▼嫌な気分になる傑作つながり