ヴィクトリア

2015年/ドイツ 138min

監督:ゼバスチャン・シッパー

出演:ライア・コスタ、フレデリック・ラウ、フランツ・ロゴウスキ、ブラク・イーギット、マックス・マウフほか

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スペイン人の女の子がドイツでトレインスポッティングみたいな感じになって2時間で人生が変わる映画。午前4時頃から夜明けまで、138分をワンカットで追いかける。役者の皆さんお疲れ様で賞。

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 長回しが好きだという話を書いたときから観たいなと思っててやっと観ました。

ツタヤのアプリとか、映画サイトのレビューなどで「特にワンカットにする必要がないのでは」「よく寝た」という意見を多く見てたので、面白くはないだろうな~と思っていたので驚きでした。私はものすごく面白かった。

午前4時ごろ、カフェ店員のヴィクトリアがクラブで夜遊びから帰るときに4人組の男性に声を掛けられる。4人組は見るからにトレインスポッティングぽい感じでなんか万引きしたりドラッグを勧めてきたり犯罪の匂いがするのですが、ドイツに来て3ヶ月、友達もいないしドイツ語も全然出来ないヴィクトリアは嬉しくて一緒に朝方の街をプラプラ遊び呆ける。飲んだりマリファナを吸ったりする。気の優しいヴィクトリアは4人組に言われるまま行動しているうちに、犯罪に巻き込まれていく。警察に追われ、ちょっといい感じになってた男性が死に、トレインスポッティング2のラストみたいな感じで…モゴモゴ。

 「ものすごくリアル」である点が印象に残りました。登場人物たちの素性・生い立ちが全く説明されておらず、そもそもヴィクトリアがドイツに来た理由も分からないまま。そしてヴィクトリアは優しいというか4人組の誘いやお願いを断らないので(おいおい)と思うけど『言葉が出来ない』と往々にしてそういう面も生んでしまう、と自然に思いました。

で、138分、ずっと途切れず観ることで彼女の不安な感情にずっとついて行けるのです。「運転だけしてくれればいいから」と言われてヘラヘラ着いて行ったら怖い変な場所に怖いマフィアがたくさんいて「今から銀行強盗しろ」という流れになり、彼女はそのまま強盗の一味として運転手をするのですが、そんな人の感情想像できますか?出来にくいと思うのですが、ずっと観てたら一緒に体験できる上にハラハラさが凄いのです。5人全員、英語がちょっとしか出来なかったら。その5人で銀行強盗して車で逃げるとしたら。全員パニック状態のなか、自分が運転するとしたら。もうパニックの相乗効果。「ヴィクトリア意外の4人はドイツ語で会話している」点も不安を煽る、何言ってるか分からない、自分に向けて英語で言ってることと、仲間内のドイツ語の会話が同じなのか分からない。観てる我々はずっと一緒に行動しているので、ものすごい不安感。

銃撃戦のシーンとか警察から逃げるシーン、一般市民を脅して逃げるために赤ちゃんを借りるシーンとか、「自分がやったらこうなるだろうな」という判断や馬鹿っぽい失敗、言動が多くてとにかく嫌になるくらいリアルでハラハラした。「静かに~!」って絶叫したり、やり場のないイライラ感っていうかミスト感(これがほんとに多い)。

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 1回だけヴィクトリアが自分について語るシーンがあって、彼女が自ら「良くないほう」「破滅するほう」を選んでしまう心情も少し判るような気がしました。若者たちの犯罪映画ではなくって、タイトルである「ヴィクトリア」本人の話であると深く納得。

ラスト手前の「金を持って逃げろ、スペインへ帰れ、ここでは誰もお前を知らない」という台詞が深く孤独だけど自由な感じで印象に残りました。彼女があの後どうしたのか分からないけど。最後にカメラが止まって、大きな通りを渡って真っ直ぐ歩いて行く彼女のうしろ姿を見守って終わる。観て良かった映画。

▼ライア・コスタさんの演技と可愛さが良くって、ピアノもめちゃくちゃ上手だし、本当に2時間超、お疲れ様でしたという感じです。

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▼ピアノのシーン