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71フラグメンツ

1994年/オーストリア・ドイツ 95min 原題/71 fragments of a chronology of chance

監督:ミヒャエル・ハネケ

出演:ガブリエル・コスミン・ウルデス、ルーカス・ミコ、ウド・サメルほか

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銀行で銃乱射したあと自身も拳銃自殺した男子大学生と、たまたまその銀行に居合わせた数名の、『その日』までの約2ヶ月間の出来事を断片的に繋ぎ合わせた映画。数えてないけどちゃんと71カットの作品だそう。「セブンス・コンチネント」「ベニーズ・ビデオ」とあわせて『感情の氷河期3部作』とか『コミュニケーションの不可能性三部作』と呼ばれる。

機会の時系列における71の断片…と訳して通じるのでしょうか。(むつかしい)

「セブンス・コンチネント(1989)」「ベニーズ・ビデオ(1992)」「71フラグメンツ(1994)」の3作品は、全て新聞記事からインスピレーションを受けて制作したものだそうで、今作は『10歳位の少年がひとりで国境を超えて来た→その後、マスコミで取り上げられ話題になったことがお偉方を動かし、温かい家庭に貰われていった(国に迎え入れられた)→彼と同じことをして、強制送還されている他の移民はどうなる?』という出来事から着想を得たそう。

作品のなかでも移民問題はストレートに描かれていた。子どもの居ない夫婦が養子(愛想のない女の子)を迎える検討をしていて、前準備として面談したりお出かけしたりしてたのだけど、テレビでたまたま観た不法入国の男の子のインタビューを見て『もらうなら、この子がいい』と夫婦とも気持ちが変わってしまうシークエンスがあった。『(女の子に)なんて言おうかしら』と。

愛想のない女の子は先生に『いつあの家に住めるの』と尋ねたり、愛想がないなりに楽しみにしてるんだけど、たぶんこの子は貰われないし夫婦と二度と会わないままかも知れない。それがどれだけこの子の心に傷をつけるか、夫婦はあまり想像しないかも知れない。でも夫婦ばかり責めることも出来ない。手を振り払ったり、目を合わさない、無視する、等とことん無愛想だった女の子。でも女の子も責めるわけにいかない。『この家に住みたい』と言葉や態度に出せれば良かったのだけど、それが出来ない彼女の気持ちもよく分かる、小さいなりに求めても得られない人生を送ってきたのだろうと思う。この『誰が悪いでもないディスコミュニケーション』、このモヤモヤ感こそ(やだなー)と思いながら監督の映画を観る理由かも知れない。

で、これはたったひとつのフラグメンツで、これが71こあるわけです。しんどい映画です。いちおう主人公というか最後に自殺する大学生がいるんですが、彼の場面は1回1回見るたびに、コップに水滴がポタポタ落ちていって、最後の1回で溢れたような印象を受けた。何が原因っていうのはなくて、たんに溢れて、疲れたっていうか、すべて手放したくなったのだろうと感じた。

▼だいぶ観るのが辛いシーン。早い卓球マシーンに必死に打ち返し続ける数分間の長回し

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