ハッピーエンド
2017年/フランス・ドイツ・オーストリア合作 107min
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:イザベル・ユペール、ジャン=ルイ・トランティニャン、マチュー・カソビッツ、ファンティーヌ・アルドゥアン、フランツ・ロゴフツキ
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それぞれが胸にいろいろ抱えた3世代の家族の映画。SMSで始まる序盤と、鋭利な刃物で切られたようなラストが見どころ。女の子がYouTubeで観てる変な動画やおしっこ関係のエロチャットなど、監督の色眼鏡で描かれている所々が謎のツボに入る。今年度のアカデミー賞外国語映画賞オーストリア代表作品。107分と昨今にしては短めで素晴らしいで賞。
多くの難民が生活しているフランス北部の町、カレー。建設会社を経営し、大きな邸宅を構えるロラン家に生まれたエヴ(ファンティーヌ・アルデュアン)は、両親の離婚をきっかけに家族と距離を置いていた。だが父親のトマ(マチュー・カソヴィッツ)と暮らすことになり、祖父ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)のいるカレーの屋敷に呼び出される。やがて、家族3世代の秘密が少しずつ明らかになっていき……。
家族の映画、と特に迷いなく書いてからフト、こいつら家族なの?ていうか家族って何?とまたモヤモヤ考えてしまった。
家という円、家族という円、年齢層という円、さらに広がって地域や国という円など、いろんな集合体・共同体のなかでのありかたを考えさせられる、ような…られないような…単に淡々と描いてあるような、とにかくこの監督は(スマホとかYouTubeとかよく分かってないけど大嫌いなんだろうな)というのだけは確かに伝わってくる映画。
私はこのブログを初めてからハネケ監督作を9本も観ているほど好きというか「クセになってる」ような状態で、このタイミングで新作公開というのがまずとても嬉しいし、住んでる街も大都会じゃないのに公開されたことにも感謝です(いろんな人に嫌われているのにも関わらず)。自分にとってハネケといえば無音のエンドロールですが、あれを映画館のスクリーンで観られたときに妙な敬虔なような気持ちになりました。
▼一見iPadだが
▼パンフレット
上に写真も貼りましたが、とにかくこのシーンが美しいんです。抜けるような青と白。これを観る前から印象づけておいて、イザ観てみたらこの人達の視線の先はきちがいと招かれざる客ですから、なんとも酷いものです。(酷いは褒め言葉)
そして、このシーンはイザベル・ユペールの結婚パーティなんだけども、このシーンに至るまでは全体的に色あいが暗んです。より一層このシーンで観るものの心が引きつけられます。そんですぐラストだから、あったかホームドラマと思って観に来ちゃった人はさぞ困惑したことと思います。
スマホの画面やチャットのやりとりの画面が度々出てくるものの、誰が打ってるのか分からず、いろいろ想像しながら観させられるのも印象に残りました。
ストーリーは仔細に書かないですが「人生万事塞翁が馬」というか「何が幸せかなんて他人が決めることじゃない」という、自分の考え方の根底にあるものを酷く刺激されるような映画でした。決めることじゃないんだけど、共同体のなかでは決めなきゃいけないし、でも本人の幸せを否定することは出来ないし、あぁ虫にでもなりたいなぁ、というような鑑賞後のモヤモヤ。答えの出ないモヤモヤ。これこそ自分がハネケ監督作に「クセになる」部分です。「白いリボン」は自分の生活とリンクする部分がなかったから楽しめなかったんだろう。
始まりと終りがとにかく自分は好きでした。特に鋭利な感じの終り方、イザベル・ユペールが振り向いたときの顔。あの顔が忘れられない。
前作の「愛、アムール」は作品情報を観る度に、しわくちゃを2時間も観たくないわいと思い観てないのですが(酷い)パンフレットを読むにつけ、おそらくやや地続きの話なのでしょう。だとしたら前作のネタバレを含むっぽいので、ネタバレ絶対許さない派のかたは、先に「愛、アムール」を観ていたほうがいいかも知れないです。
上映中に時間が合えばもう一回観たいなぁと思ってるものの、こんなクソ当たり前なこと言いたくないけど4月は忙しいですね。
▼自分のなかでイザベル・ユペールの出る映画の変態率(おしっこ率)が尋常じゃない