昭和歌謡大全集

2003年/日本 112min

監督:篠原哲雄(原作:村上龍

出演:松田龍平安藤政信池内博之樋口可南子森尾由美、岸本加世子、市川実和子内田春菊ほか

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若者集団とおばさんグループが全面戦争する話。村上龍の同名小説が原作で、村上龍氏はこの映画をいたく気に入っているそう。荒唐無稽な人物を演じる豪華な顔ぶれと、昭和の歌謡曲に乗せて進む敵討ち戦争が見どころ。

イシハラら6人の若者は共通の話題も趣味もなく、なんとなく集まっては深夜にパーティを行い、そこで昭和歌謡曲を歌うのを楽しみにしていた。ある日、仲間の一人・スギオカが路上で女性を殺害する。殺されたのはヤナギモトミドリ。彼女の仲間であるスズキミドリら5人のオバサンたちは同じミドリという名前からミドリ会というグループを作っていた。仲間を殺されたミドリ会は現場に残された遺留品から犯人・スギオカを特定し“復讐”を決行する。(Wikipediaより)

原作の小説が大好きなのです。なので、特に映画に興味を持たず過ごして生きてきたのですが何故か急に気になり鑑賞。ずっと「どんなテンションの映像なんだろうな」と気になってはいたのです。というのが、自分が読んでいた文庫本の表紙が映画のいち場面を使ってるやつで。

▼これです

昭和歌謡大全集 (集英社文庫)

読んでるときは、こういうのはだいぶ罪深いなーと思ってたんですが、今思えば良かったような気がします。というのは、読書中にイシハラが松田龍平で脳内再生されていたからです。もしこの事前刷り込みがなかったら「男前すぎるだろ!」「こんな男前がこんな捻くれた人間に育つ訳がない」といの一番に書いてそうですが、そこまで違和感を感じずに済みました。それにしても安藤政信は男前すぎですが(一番男前なのに一番最初に死ぬので残念)。

そして思っていたより面白かったので驚きだった。ていうか「村上龍、映像化できないようにワザとこういう描写にしてるんかな~」という小説なのですが(それだけに読んでいる最中の頭のなかは自分の想像力がフル稼働して『小説を読む快楽』が物凄く感じられる作品なんです)、わりと面白いやんけ、というのが素直な感想。

映像化できないであろう描写のひとつに、見ただけで吐き気がして顔面蒼白になってしまう程に顔の造形がめちゃくちゃおぞましい女の子が出てくるのですが、そこは単なる目立つ顔枠として市川実和子が出ていた。

そのほか金物屋に拳銃を買いに行ったり、手作りで原子爆弾を作ったり、実在の地名がバンバン出ていたりという点も、時系列が変わったり設定を割愛したりしながらも忠実に作られていた。

それだけに一つ残念だったのは、深夜のカラオケパーティの描写。もっとキモいはずだしもっとグダグダで汚いはずなので、あのキャストでもっと忠実なのが観たかったなと。彼らはコミュニケーションが出来ないキモい若者集団なんだけど、何か共通の趣味があるオタク集団でもないし、じゃぁ単純に歌が好きな集まりかというとそうでもない。熱中できる物がなく、性欲も闘争欲も満たせず、何でもいいから何かをやってないと生きる事に耐えられないのだ、という空虚で切実なキモさを表現した演技が観たかった。カラオケパーティーは回数も少なくて残念。

あと謎だったのがおばさんグループの大根演技。おばさんのおばさんぽさを出すためにワザとしていたのかも知れない。おばさんに限らず全体的に過剰に芝居がかった映画ぽくない演技で、自分に身近な出来事・存在という感じがしなくて良かった。

原作が好きだから観てないんだよねという方が居たら、まぁ機会があれば観てみてもいいかもねという感じです。何より音楽が重要なこの物語なわけですから、実際に流れてくるのはシュールでなかなか良いものでした。そして、小説読んでないんだよね、という方はぜひ読んでみて欲しいです。やり場のない熱血がひととき味わえる名作です。


また逢う日まで 尾崎紀世彦