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万引き家族

2018年/日本  120分

監督:是枝裕和

出演:城桧吏、佐々木みゆ、松岡茉優安藤サクラ樹木希林リリー・フランキー池脇千鶴高良健吾ほか

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不正受給問題をベースとして誘拐など各種犯罪によって繋がる家族の映画。安藤サクラ樹木希林の名演によって寝させない。今年のカンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞。我々は誰しも柳楽優弥という名の呪いにかかっている。

 宇宙戦争を通じてさまざまな葛藤のなかを何とか生き延びて、「親が言う善悪」と「自分の中に芽生えた善悪」の違いにゆらぎ、親を乗り越えて成長する主人公の映画を観て「宇宙戦争はいけない!!」なんて誰も(あんまり)言わないじゃないですか。

 

 『誰も知らない』がものすごい好きなんです。『万引き家族』を観て、『誰も知らない』を思い出すシーンは多々あったのですが、ちょっと個人的には超えられない高い壁がありました。内側の人がどう思ってるか?ということはテーマとして重なっているんだけど、観たタイミングとかもあるかもしれないです。別れた彼女でオナニーするみたいな感じというか、柳楽優弥という呪縛から我々日本人は誰も逃れられないのだと思いながら観てたのですが、安藤サクラ樹木希林が本当に素晴らしくて、特に安藤サクラは(これって映画よね)とドキリとするほど素晴らしい演技。この映画は二人が支えるところが非常に大きく、二人で陸橋を渡っているシーンはおしりがムズムズするほど良かった。「犯罪によって繋がる家族」と書きましたが、自分はそういう印象は持ちませんでした。無いと出会わないし繋がらない訳ですが、ここはうまく説明できないんですが。

あと池脇千鶴が好きなんで、わくわくしてたんですがめっちゃチョイ役だし池脇千鶴であることが逆に邪魔な役というか、高良健吾もですけど、あのへんは少し微妙でした。

ちょっと盛り込みすぎ感がある(万引きはごく一部)のに、タイトルが『万引き家族』で意味不明というか露悪的だな~。と思ってたのですが

 また『万引き家族』に関しては、内容に対しても誤解が先行している印象を受けます。正直、タイトルに「万引き」を冠しているのは、ちょっと狙いすぎかもしれません。これについては、監督が途中から『声に出して呼んで』というタイトル案を出していたのに対し、プロデューサーがインパクトを優先して『万引き家族』で落ち着いたとのこと。確かに話題性としては完全にプロデューサーの勘が当たっていましたね。

『万引き家族』是枝裕和監督の「祝意辞退」と「助成金」の関係 | 文春オンライン

という記事を読んで納得。確かに、『声に出して呼んで』だったらこんなに観に来る人多くないかもな、というくらいの満員でした。満員の映画館は久しぶりだったので、なかなか楽しかったです。同行者が「満席家族」と呟いてて面白かったです。

観終わったあと樹木希林安藤サクラについて調べてたら、樹木希林は芸名をオークションで売ってたり、事務所もマネージャーも付けておらずギャラ交渉も自身でされていたり、面白い人だなと思いました。安藤サクラも年が同じで今後応援したくなり、出演作を観てみようかなと思います。

うーん、SNSをはじめとして色んな所で公開前から熾烈な論争が巻き起っていましたが、何というか『テーマが問題なんじゃない事はお察しください』という作品でした。批判してる人の多数は観てなくて、ただ何かに怒りたいのでしょう。

宇宙戦争じゃなくて、身近すぎたのが駄目だったのですかね?それだったらみんな政治参画意識が強くて素晴らしいのですが。

ラストカットで佐々木みゆさんが、教わった歌を歌い、手すりから遠くを見つめる瞳。私たちは経験から何かを学んで、与えられた場所で生きていくしか無いのだし、だからその糧にするために私はこれからも映画を観るのだと思った。